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2009年2月28日「伊那ふれあい~な」にて
「不登校の理解を深める研修会」Q&A

去る2月28日、伊那市で行われた「不登校の理解を深める研修会」の折、出された質問への回答です。研修会で出された質問はいずれも深刻なお悩みで、温かい、具体的・正確なお答えで安心していただきたいものです。 今回はその研修会で出された質問の中からAさんのお悩みに杉本雅子さんから回答させていただきます。

<相談> Aさん 
中学生の女子。学校に行くとすごく疲れるようです。それで次の日とかに休んでしまいます。体力的には問題なく見えるのですが、どうしてでしょうか。


<回答> 杉本 雅子
お嬢さんは学校に行くと次の日に休んでしまうほど疲れるのですね。ご心配ですね。文面からお察しして、疲労の原因となる病気がない事を前提としてお答えさせていただきます。

お嬢さんは、最近になって強いストレスを受けたか、長期にわたってストレスを受け続けたか、いずれにしても現在強いストレスを持っていると考えられます。それが学校に起因するものなら、当然学校に行くのは辛いですし、学校が原因でない場合でもストレスをかかえた子にとって学校は緊張する場所である事が多く、さらなるストレスの荷重が加わると思われます。

おそらくお嬢さんは、「頑張って学校に行かなければいけない」と考える自分と、「学校に行けない」自分(本人は意識の下に抑え込んでいるかも知れないが、疲労として表われている)との間で大きく揺れて苦しんでいるのではないかと思います。大きなストレスを受ける事によって心は不安や恐怖で膨れ上がり、理性では抑えきれないほどになって、疲労という形で噴き出してきています。お嬢さんはこのような心の限界にいて、なお頑張り続けているのではないでしょうか。このような時は無理をして登校することを繰り返すほど、ますます疲労が強まっていきます。

疲労は、過剰なストレスによって大切な心が壊されないよう「これ以上無理はしないで」というサインであり、学校に行かない事は安全反応なのだと言えます。

お嬢さんには、疲れて学校に行けない自分を、否定されず責められず、あるがままに受け止めてもらえる安心できる居場所が必要です。親が自分を受け止めてくれ、家庭が安心できる居場所であれば、これほど心強い事はありません。安全な場所で休養をとり、親が心を寄せてくれていると感じる中で、疲労の奥にあるものが言葉になるかもしれません。

自分でも否定したい気持ちは話しにくいものです。親に嫌われてしまうかもしれないと思って言い出せない事もあります。また、本人にも何が原因でこんなに疲れてしまうのか分からない事も少なくありません。なぜだか疲れる、不安だ、怖いとしか言えない事もあります。お嬢さんの話が親の知りたい事の核心に行かずじれったく感じたり、間違っていると感じても、せかさず否定せずそのままを大切に聴いてあげてください。

「そんなことは社会に出ればいくらでもある。頑張らなければ。」というような励ましは入れない事が大事です。疲労で学校に行けなくなるまで頑張ってきたお嬢さんは、中学生ですから何度も自分にそう言い聞かせてきたと思います。分かっていても出来なくなっている時にそう言われると辛く、何も言えなくなってしまいます。ありのままのお嬢さんを認め、聴いてあげてください。安心させてあげてください。

いじめ等、具体的に解決を要する問題があると分かった場合、その解決に向けて働きかける事は重要ですが、残念な事に、即解決という事にはなかなかなり得ないのが現実だと思います。その場合、お嬢さんに無理をさせる事は危険です。生きていく上で我慢は必要ですが、限度を超えた我慢は人の心に大きな傷を残します。

お嬢さんの苦しい心が「疲労」として表れているという事は、少し理解しにくいかもしれません。親が一度カウンセラーを訪ねられ、今お嬢さんが置かれている状況が心理的にどういうものなのか知識を得られるとよいと思います。置かれている状況が理解できれば親の気持ちも整理できますし、お嬢さんへの関わり方も混乱せずにすみます。相談するカウンセラーは、登校させるという方向性を持たない方、親の心配に寄り添って聴き、説明してくれる方が良いです。今回参加された研修会を手がかりに、カウンセラーを見つけるのもひとつの方法です。

カウンセラーとお話して納得されたら、お嬢さんのカウンセリングをしてもらうと良いと思います。話を聞いてもらって気持ちが楽になった経験は誰にもあると思います。ただ、デリケートで深刻な、時に自分でも訳の分からない自分の気持ちを話す時、その内容を否定されるのは本人にとって最も恐ろしい事です。「分かってもらえる」と感じる事が大変重要です。それを念頭に置いてカウンセラーを選んでほしいと思います。本人の気持ちに寄り添って話を聴いてくれるカウンセラーに話をすれば、心の中で膨れ上がった不安や恐怖が少しずつ吐き出され、苦しさもやわらぎます。

先に、親がお嬢さんのありのままを聴いてくださいと書きました。重複するように思われるかもしれません。しかし、どちらもあれば望ましいと思います。親子は、愛おしさ、思い入れのある関係であり、お互い冷静に受け止める事がいつでもできるというわけにはいきません。一緒に傷つき、動揺する事もあります。それは、とても暖かい大切な関係です。娘さんにとって心の拠り所です。一方、カウンセラーは第三者ですので、娘さんは心情をそのまま語り、カウンセラーは静かに受け止め、ストレスの吐き出しを助ける事ができます。専門的知識を持って接する事ができます。安心の中で休息を取りストレスを吐き出していくうちに、お嬢さんはいつかまた落ち着いた心で動き出すと思います。

さて、ここからはご質問にはないのですが、このような研修会に参加された事から、不登校についてご心配かと拝察し、書かせていただきます。
 
 不登校ということになると、本人はとりあえず無理をしなくて良いと安心する反面、皆と同じ事が自分にできないという劣等感に悩まされる事があります。真面目な人であるほど、罪悪感を持ったり、周囲の目を意識して引け目を感じてしまう事もあります。せっかく心の危険を回避するのですから、なるべくこれ以上本人の心が傷つかないようにしたいものです。

そのためには、親が不登校についての理解を深める事が大切です。理解する事で親も救われます。その理解の上で自己否定する本人を受け止めれば、本人も安全にいる事ができます。登校刺激等についても知識があれば、本人に余計な傷をつけずにすみます。本人が安全である事がこの時期最も大事なのです。
 
また、親も、本人の様々な言動への心配、進路や将来の心配、学校との関係、兄弟関係等、悩まれると思います。不登校の原因を本人の弱さや、親の育て方の問題とされて傷つかれたり、怒りを感じる事もあるかもしれません。そして、親も人の子、自分自身もストレスを感じながら生きています。いつでも心穏やかに子どもに接する事など無理な話です。そうしたいけれどできない、そんなお悩みも出てくると思います。親もまた不安で辛いと思います。
 
そこで、信頼できるカウンセラーを持つとともに、「親の会」や「カウンセリング研修会」などに参加される事をお勧めします。悩んでいる親自身に共感して理解してくれる人達の集まりで、守秘義務があり、本音を話せる場所があるのは、大切な事です。そこでも不登校について理解を深められれば、親子にとって大きな力になります。さらに、生きた情報を提供しあうことができます。現在困っている事、将来の事、情報は欲しいと思います。親の安心にもなりますし、本人が動き出そうとする時や進路選択の時期が来た時に役に立ちます。参加されてはいかがでしょうか。支えあえる仲間がいるのはいいですよ。視界が広がります。