3年間を振り返り そして 4年目を見つめて2006年02月25日
Category: 活動報告
上伊那サポートセンター 戸枝智子
明けましておめでとうございます。
上伊那子どもサポートセンターも立ち上げから早くも3年が過ぎようとしています。
不登校・ひきこもりの児童生徒・若者の最善とは何かを常に考え合いながら無我夢中で過ごした3年間でした。立ち上げ当初は、私たち民間(不登校の子を持つ親、家庭教師、塾講師、カウンセラー、様々な仕事に就いているボランティア等々)に何ができるのかもわかりませんでした。しかし、一人ひとりの不登校の子どもたちやご家族の方々との出逢いの積み重ねによって、支援の柱が徐々に立ち上がっていきました。そして、それぞれがここに来て本格的に機能し始めた感があります。上伊那の各学校の先生方や臨床心理士の方々とのつながりも生まれ連携・協働の体制も創られつつあります。現在、「フリースペース」、「ハミングDay(月1回のスポーツの日)」、「マンツーマンの学習支援」等でサポートしている児童生徒や若者は30名にのぼります。
あらためて、伊那市教育委員会、上伊那教育会をはじめお力添えをいただいた多くの方々に心より感謝申し上げます。
さて、3年という節目の今、上伊那子どもサポートセンターの活動を振り返ってみたいと思いますが、前置きを2つさせていただきます。
昨年、臨床心理学の領域の活動についてお話を伺う機会がありました。そして、そこで『コミュニティ・アプローチ』(臨床心理学的地域援助)という言葉を知りました。困難を抱えている当事者の支援というと、従来は、一対一の面接(相談室)が主だったけれど、現在は、当事者の周りのシステムに働きかけるコミュニティ・アプローチへと流れが変化してきているという内容でした。私は、子どもサポートプランが今までやってきたこと、これからやろうとしていることは「これだったのか!」と思わずつぶやいていました。もちろん臨床心理の専門家ではない、一住民に過ぎない私たちですが、今求められているのは地域住民の「人とつながり、支えあい、子どもを育む力」なのだと思いました。これは、不登校支援に限らず、子育て支援、子どもたちを犯罪から守る活動等、すべてにいえることだと思います。
私たちの活動を支え続けて下さっているカウンセラーの北澤康吉先生の造語で、「丸太とカモメ」というものがあります。悩みのただ中にある相談者を、大海原を漂流している漂流者の状態に例えてみた時、不安、恐怖、孤独、絶望といった気持ちでいる漂流者にまず何より必要なものは、それにつかまっていれば、溺れずに漂っていられる“一本の丸太”です。丸太にはエンジンもナビゲーションもなく、ただ、共にいて、共に漂ってくれる存在です。
また、大海原を当てもなく漂流している時、一羽のカモメが飛んできて「陸の方向はあっちだよ。」「向こうに漁船が見えているよ」と伝えてくれたら、漂流者は、展望と共に勇気も出てきます。この「丸太とカモメ」の両方がないと広い意味での十分なカウンセリングは成立しないとおっしゃいます。
さて、上伊那子どもサポートセンターの支援の柱は、相談、親の会、子どもの居場所、情報発信、地域ネットワーク構築の5つとしていますが、今回は、前置きした「コミュニティ」と「丸太とカモメ」の視点から支援のあり方を振り返ってみたいと思います。
相談活動は、子どもサポートの入り口のような役割でもあります。2人のコーディネーターが、相談者の心に丸太的に応え、カモメ的なお答えをもできるように努めています。身内びいきと思われるかも知れませんが、上伊那各地をとびまわっている2人の姿は、本当にカモメのようです。
この3年間のコーディネーターの働きを見ていて、連携協働というのは、行政と民間が同じテーブルについて会議を持つことではなく、一人ひとりの子どもを真ん中にして、最善の支援をみんなで考えていくことなのだと実感しています。まさに「事件は現場で起きているんだ」ということです。
親の会もまた、「丸太とかもめ」的支援の場です。親は自分自身が漂流者でもあるわけですが、同時に子どもにとっての丸太でありカモメとならなければなりません。仲間との支え合いによってまず、親が陸地にたどり着き安定することが、子どもを助けることになるのではないでしょうか。
また、親の会は、同じ問題を抱えた親同士が集まってできているコミュニティでもあります。かつての地域にはあった、お互い様と言い合って支え支えられる関係を私たちはすっかり忘れてしまっているのではないでしょうか。ましてや、子どもたちにとっては、未知のものかもしれません。あたたかな雰囲気の中で語り合うことが、解決の第1歩となったという方も多くいます。気軽にご参加ください。
子どもの居場所も、丸太とカモメの2種類の居場所があると考えています。丸太的居場所とは、ありのまま(be)でいていい場、安心・安全の場で、カモメ的居場所は、プログラムやカリキュラムの設定がある(do)場と考えています。不登校の子どもたちにとって家庭が第一の丸太的居場所ですから、何も無理をして家庭から出る必要はないと思います。重要なのは、子どもの心の状態です。やがて、エネルギーが溜まり、家から一歩踏み出した時、コミュニティの中に丸太的居場所があれば、さらにそこでエネルギーを蓄えて、やがて「カゴメ的」居場所へと巣立っていくのだと思います。それは、学校であったり、趣味の活動であったり、アルバイトであったりと、一人ひとり違ってくると思います。
フリースペース♪ハミング♪は丸太的居場所と位置づけてこの2年間運営してきました。
何人もの子どもや若者がスリースペースから巣立って行きました。巣立ちの日はある日さりげなく訪れたりしますが、スタッフの私たちは、子どもたちとの出逢いに感謝しつつ見送ります。そして、ふと思い出して立ち寄ってくれたり、ちょっと疲れて訪ねてくれたりした時には「よう来たね。」と迎えたいと思っています。
学習支援は、上伊那教育会の会議室をお借りしたり、家庭訪問したりして、マンツーマンで行っています。子どもたちの不登校を保障とすると同時に、本人の希望があれば学習の保障もしたいと考えています。「義務教育」とは、子どもが学校へ行く義務ではなく、おとなが子どもの学びたい気持ちに応え、学べるようにする義務なのだと、これも子どもたちとの関わりの中で教えてもらったことです。
情報発信・ネットワーク構築、主に、コミュニティ・アプローチの取り組みととらえることができます。子どもサポートでは、隔月で、ニュースレター『ハミング・ウォーカー』を発行したり、公開講座やネットワークフォーラム等を開催したりして、上伊那地域の方々に不登校・ひきこもりへの理解を深めていただけるように努めています。
一枚の絵に例えるなら、個人を図とすれば、地域の環境は地にあたるといいます。図と地はお互いに関わり合い、影響し合っています。不登校・ひきこもりの問題を、一方的に不適応と考えるのは、図と地の関係が絶たれている状態であり、根本的な問題の解決にはつながってはいかないことにようやく私たちは気づいてきました。子どもたちや家族への援助を専門家にのみ委ねるのではなく、援助の責任を共に地域社会の私たちが、背負うのだという自覚を持ち、子どもが育つ地域社会の変革を目指すことが今、緊急課題となっているのではないでしょうか。
上伊那子どもサポートセンターも民間の支援機関の一つとして、微力ながらではありますが、さまざまな方々と手をつないで活動していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
いけません
大通りは車があぶないから
あそんではいけません
裏通りも車が入ってくるから
自転車のりは いけません
公園はせまいから
野球をしてはいけません
「いけません」の檻のなかに
とじこめられている ぼくら
木のぼりができないのは
のぼる木が ないから
足が弱いのは
走りまわる広場がないから
「いけません」は ぼくらが
投げかえす ことば
(『花には太陽を 子どもには平和を』より)
明けましておめでとうございます。
上伊那子どもサポートセンターも立ち上げから早くも3年が過ぎようとしています。
不登校・ひきこもりの児童生徒・若者の最善とは何かを常に考え合いながら無我夢中で過ごした3年間でした。立ち上げ当初は、私たち民間(不登校の子を持つ親、家庭教師、塾講師、カウンセラー、様々な仕事に就いているボランティア等々)に何ができるのかもわかりませんでした。しかし、一人ひとりの不登校の子どもたちやご家族の方々との出逢いの積み重ねによって、支援の柱が徐々に立ち上がっていきました。そして、それぞれがここに来て本格的に機能し始めた感があります。上伊那の各学校の先生方や臨床心理士の方々とのつながりも生まれ連携・協働の体制も創られつつあります。現在、「フリースペース」、「ハミングDay(月1回のスポーツの日)」、「マンツーマンの学習支援」等でサポートしている児童生徒や若者は30名にのぼります。
あらためて、伊那市教育委員会、上伊那教育会をはじめお力添えをいただいた多くの方々に心より感謝申し上げます。
さて、3年という節目の今、上伊那子どもサポートセンターの活動を振り返ってみたいと思いますが、前置きを2つさせていただきます。
昨年、臨床心理学の領域の活動についてお話を伺う機会がありました。そして、そこで『コミュニティ・アプローチ』(臨床心理学的地域援助)という言葉を知りました。困難を抱えている当事者の支援というと、従来は、一対一の面接(相談室)が主だったけれど、現在は、当事者の周りのシステムに働きかけるコミュニティ・アプローチへと流れが変化してきているという内容でした。私は、子どもサポートプランが今までやってきたこと、これからやろうとしていることは「これだったのか!」と思わずつぶやいていました。もちろん臨床心理の専門家ではない、一住民に過ぎない私たちですが、今求められているのは地域住民の「人とつながり、支えあい、子どもを育む力」なのだと思いました。これは、不登校支援に限らず、子育て支援、子どもたちを犯罪から守る活動等、すべてにいえることだと思います。
私たちの活動を支え続けて下さっているカウンセラーの北澤康吉先生の造語で、「丸太とカモメ」というものがあります。悩みのただ中にある相談者を、大海原を漂流している漂流者の状態に例えてみた時、不安、恐怖、孤独、絶望といった気持ちでいる漂流者にまず何より必要なものは、それにつかまっていれば、溺れずに漂っていられる“一本の丸太”です。丸太にはエンジンもナビゲーションもなく、ただ、共にいて、共に漂ってくれる存在です。
また、大海原を当てもなく漂流している時、一羽のカモメが飛んできて「陸の方向はあっちだよ。」「向こうに漁船が見えているよ」と伝えてくれたら、漂流者は、展望と共に勇気も出てきます。この「丸太とカモメ」の両方がないと広い意味での十分なカウンセリングは成立しないとおっしゃいます。
さて、上伊那子どもサポートセンターの支援の柱は、相談、親の会、子どもの居場所、情報発信、地域ネットワーク構築の5つとしていますが、今回は、前置きした「コミュニティ」と「丸太とカモメ」の視点から支援のあり方を振り返ってみたいと思います。
相談活動は、子どもサポートの入り口のような役割でもあります。2人のコーディネーターが、相談者の心に丸太的に応え、カモメ的なお答えをもできるように努めています。身内びいきと思われるかも知れませんが、上伊那各地をとびまわっている2人の姿は、本当にカモメのようです。
この3年間のコーディネーターの働きを見ていて、連携協働というのは、行政と民間が同じテーブルについて会議を持つことではなく、一人ひとりの子どもを真ん中にして、最善の支援をみんなで考えていくことなのだと実感しています。まさに「事件は現場で起きているんだ」ということです。
親の会もまた、「丸太とかもめ」的支援の場です。親は自分自身が漂流者でもあるわけですが、同時に子どもにとっての丸太でありカモメとならなければなりません。仲間との支え合いによってまず、親が陸地にたどり着き安定することが、子どもを助けることになるのではないでしょうか。
また、親の会は、同じ問題を抱えた親同士が集まってできているコミュニティでもあります。かつての地域にはあった、お互い様と言い合って支え支えられる関係を私たちはすっかり忘れてしまっているのではないでしょうか。ましてや、子どもたちにとっては、未知のものかもしれません。あたたかな雰囲気の中で語り合うことが、解決の第1歩となったという方も多くいます。気軽にご参加ください。
子どもの居場所も、丸太とカモメの2種類の居場所があると考えています。丸太的居場所とは、ありのまま(be)でいていい場、安心・安全の場で、カモメ的居場所は、プログラムやカリキュラムの設定がある(do)場と考えています。不登校の子どもたちにとって家庭が第一の丸太的居場所ですから、何も無理をして家庭から出る必要はないと思います。重要なのは、子どもの心の状態です。やがて、エネルギーが溜まり、家から一歩踏み出した時、コミュニティの中に丸太的居場所があれば、さらにそこでエネルギーを蓄えて、やがて「カゴメ的」居場所へと巣立っていくのだと思います。それは、学校であったり、趣味の活動であったり、アルバイトであったりと、一人ひとり違ってくると思います。
フリースペース♪ハミング♪は丸太的居場所と位置づけてこの2年間運営してきました。
何人もの子どもや若者がスリースペースから巣立って行きました。巣立ちの日はある日さりげなく訪れたりしますが、スタッフの私たちは、子どもたちとの出逢いに感謝しつつ見送ります。そして、ふと思い出して立ち寄ってくれたり、ちょっと疲れて訪ねてくれたりした時には「よう来たね。」と迎えたいと思っています。
学習支援は、上伊那教育会の会議室をお借りしたり、家庭訪問したりして、マンツーマンで行っています。子どもたちの不登校を保障とすると同時に、本人の希望があれば学習の保障もしたいと考えています。「義務教育」とは、子どもが学校へ行く義務ではなく、おとなが子どもの学びたい気持ちに応え、学べるようにする義務なのだと、これも子どもたちとの関わりの中で教えてもらったことです。
情報発信・ネットワーク構築、主に、コミュニティ・アプローチの取り組みととらえることができます。子どもサポートでは、隔月で、ニュースレター『ハミング・ウォーカー』を発行したり、公開講座やネットワークフォーラム等を開催したりして、上伊那地域の方々に不登校・ひきこもりへの理解を深めていただけるように努めています。
一枚の絵に例えるなら、個人を図とすれば、地域の環境は地にあたるといいます。図と地はお互いに関わり合い、影響し合っています。不登校・ひきこもりの問題を、一方的に不適応と考えるのは、図と地の関係が絶たれている状態であり、根本的な問題の解決にはつながってはいかないことにようやく私たちは気づいてきました。子どもたちや家族への援助を専門家にのみ委ねるのではなく、援助の責任を共に地域社会の私たちが、背負うのだという自覚を持ち、子どもが育つ地域社会の変革を目指すことが今、緊急課題となっているのではないでしょうか。
上伊那子どもサポートセンターも民間の支援機関の一つとして、微力ながらではありますが、さまざまな方々と手をつないで活動していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
いけません
大通りは車があぶないから
あそんではいけません
裏通りも車が入ってくるから
自転車のりは いけません
公園はせまいから
野球をしてはいけません
「いけません」の檻のなかに
とじこめられている ぼくら
木のぼりができないのは
のぼる木が ないから
足が弱いのは
走りまわる広場がないから
「いけません」は ぼくらが
投げかえす ことば
(『花には太陽を 子どもには平和を』より)

