古原正之 氏/長野県教育委員会 教学指導課教育主幹兼生徒指導係長

 『子どもサポートプラン』についてですけれども、思い起こせば、ちょうど1年程前になる訳ですが、私たち(県教委)は、例年の9月ぐらいに前年度の児童生徒の不登校を含めまして様々な状態について長野県下の小中学校のデータを全て集約いたします。不登校の児童生徒数ですが、小中合わせますと、2,600名をこえました。これは、統計上最悪の状態であったわけでございます。そしてさらにこれを分析しますと、一層深刻な面が浮かび上がってまいりました。2,600名をこえる児童・生徒というのは、通常学校を30日以上欠席した児童・生徒で、その理由が、病気ですとか経済的理由によらない生徒を不登校児童・生徒ということでカウントするわけでございます。通常、学校というのは、年間210日前後の登校日数があるわけですが、実は、この2,600名をこえる児童・生徒の中で、実に60%以上が100日以上の欠席者なんです。つまり、学校の半分を欠席している。さらに、分析しますと、全体の2割が200日以上なのです。いうなれば、ほとんど全休という状態であったわけでございます。

 こういう状態を把握した中で、私たち教育委員会も前々から不登校児童・生徒への対応は、最大かつ緊急の課題と捉えました。こういう事態に直面し、もはや、私たち生徒指導係だけでは対応しきれない、もう教育委員会をあげてこの問題に対応しようということで、昨年10月に、教育委員会は9つ課がありますけれども、それを横断的に係長以上で不登校問題に関わる、局内の対策委員会を立ち上げてどのようにこの問題に対応していくか話し合いを持ちました。

 丁度、そういう最中、皆様もよくご存知かと思いますが、田中知事が再選され、また、来年度の予算編成がまわって参りました。その際、大変厳しい経済事情の中で、効果的な県政運営をするためには、効果が期待できる、しかも長野県が全国に先駆けて発信できる、そういう特徴的な事業には率先してお金を出しましょうという、いわゆる「長野モデル創造枠事業」が発表になったわけでございます。その動きを受けまして、私たち教育委員会は、もうこれを活かさない手はないということで、局内で話し合いを持ち、予算獲得につきましては、生徒指導係が率先して行い、すべての教育委員会が協力をするという体制がととのったわけであります。

 私たちが最初に目をつけたのは、今から思うと一つの殻が破れなかったわけでございますが、長野県下には、120名余の生徒指導加配教員がおりましたが、その先生方に、家庭訪問を中心に不登校児童・生徒に関わって頂こうというプランをたてました。ところが、これはうまくいきませんでした。長野モデル創造枠という新たな視点からのものではなかったわけですね。しかし、何かの対応をとりたいということで私たちが次に考えましたのが、いわゆる民間の方々の協力を得られないかというところに視点をむけまして、最初に不登校経験をした2人の方からお話を聞く機会があったんです。その際に、これは民間と一緒にやれば、きっといい効果が上がるだろうという示唆をいただいたわけですね。そのあとすぐ、私たちが認知している、いわゆる不登校児童・生徒に関わっていた「ながネット」を通じまして、県内各地から5名ほどの代表者に県庁に集まって頂いたわけです。それで、私たちもこういう状況を深刻に捉えて何とか皆さんと一緒に不登校児童・生徒へのサポートができないものか、民間の方々との懇談会がスタートしたわけなんです。

 ところが、この懇談会は、非常に私たち行政にとりましては、一種大きな試練でございました。と申しますのは、今までの不登校児童・生徒への対応は、基本的には学校を通してのものであったわけでありまして、民間の方々との連携というのは今までなかったわけでございます。その点につきまして、何よりも協力を得るまえに、私たちは、民間の方々からの今までの行政に対する批判を受け止めなければならなかったわけであります。実にその回数が最終的には6回にまで及びました。当初、5,6名の方とスタートしてきたわけでありますが、回を重ねるごとに民間の方々が膨れ上がっていくわけですね。確か3回目あたりからは、伊那地区からも北澤康吉先生も見え始め頃ではなかったかなぁと思います。最後は、一つの部屋に民間の方々が50名以上集まったのではないでしょうか。そういう中で、熱く不登校問題についての議論が交わされたわけございます。そういうお互いのやり取りを通じて私たちは、やっと民間の方々と今までの溝を埋め合わせることができたのかな、そして、協力の体制ができるのかなと、こんなふうに受け止めているわけです。 >>>次ページへつづく