連載コラム
「父親への反発・嫌悪・憎悪」 その14 No.232006年07月19日
Category: 連載コラム
北澤康吉/ロジャース流カウンセラー
「不潔恐怖」の項でも触れましたが、父親に対して「反発・嫌悪・憎悪」、それ程でなくても妙に「煙たがって避ける」といったことがあります。女の子にも異性への微妙な気持ちと重なって、父親への不潔恐怖が出ることがあります。父親の入った後の風呂に入らない。同じ洗濯機で一緒に洗われるのはイヤといった風に。
その強弱は様々ですが、とくに男の子の場合かなり激しくそれが出ます。登校拒否はしているけれど、家では結構楽にいて、お母さんやきょうだい達とは一緒にテレビを観たり、おしゃべりしたり、笑ったり。しかし、お父さんが帰ってくると、途端にさっと自分の部屋に入ってしまう。「俺だけ避けられている」と思えば、お父さんも内心穏やかではありません。中にはそれがものすごい憎悪・嫌悪になって、廊下を歩く父親の足音を聞いただけで飛び出していって殴りそうになる、その気持ちを必死で抑える、と言った諸君もおります。
訳の分からぬ「吐き出し」がたまたま父親に向けられているのです。どんな良いお父さんでも、それまでどんな良い父子関係でもそんなことは一切関係無しに、ある時から突然そんな状態になります。
「父子関係の正常化」と言う人がおりますが、それはどうも違うようです。もし仮に(そんなことはありませんが)父子関係が正常化したら、激しい吐き出しの対象が失われたことになります。
一杯溜まったはち切れそうなものの吐き出しです。どこか別の出口を見つけなければなりません。その場合はもっと別の、もっと大変なものがその吐出し口になる・・・僕は仮説的にそう思っております。今出ている姿が、その子にとって一番無理のない形だと思っております。
お父さんは辛いですが、「今はこれがオレの役目だ、こんな形で息子と関れているのだ」と思うことが大事だと思います。「自分のどこかがおかしかったからではないか」ということになれば、その原因探しをしなければなりません。どこまでもどこまでも深みにはまっていきます。辛さがどんどん増すだけです。
O県から相談に見えたお父さん。顔面蒼白、ひどく具合が悪そうでした。息子さんの憎悪・嫌悪が激しくお父さんに向けられました。「超」が付く真面目なお父さんでした。「このままオレが生きていれば息子はどんどん悪くなる一方だ。オレがいなくなれば彼も立ち直ってくれるかも知れない」。奥さんと思い余った相談の末、「お前は残ってくれ、俺は死ぬから」ということになり、本当に自殺を図りました。送り出したお母さんの気持ちもどんなだったでしょうか。
人けのない山の中でナイフで胸を刺しました。刃先は肺の手前まで届き、いわゆる「人工気胸」の状態になりました。呼吸がほとんど出来なくなったのです。苦しみもがいているところを、たまたま運良く発見され、救急病院に運ばれ、結果的にはこちらの岸に戻ってきてくれました。それから1ヶ月足らずで、ご夫婦ではるばる相談にみえたのです。
「父」は辛いのです。しかし、その「避けられ、嫌悪され、憎悪され」ていること自体が大事なのです。しばらくその役目を甘んじて引き受けましょう。いずれ必ず一段落します。展望はちっとも暗くありませんから。嵐のような激しい時期が過ぎても、何となく避けられる状態は続くかも知れません。
しかし、息子さんがこの状況をすっかり通り抜けたとき、また元のような父子関係に戻ります。いや、それどころか、互いに深い傷がついた分、もっとしみじみした素敵な父と子になれます。大丈夫です。ちっとも心配いりませんから。
次の記事:「どうして生きなきゃならないの?」 その15 No.24「不潔恐怖」の項でも触れましたが、父親に対して「反発・嫌悪・憎悪」、それ程でなくても妙に「煙たがって避ける」といったことがあります。女の子にも異性への微妙な気持ちと重なって、父親への不潔恐怖が出ることがあります。父親の入った後の風呂に入らない。同じ洗濯機で一緒に洗われるのはイヤといった風に。
その強弱は様々ですが、とくに男の子の場合かなり激しくそれが出ます。登校拒否はしているけれど、家では結構楽にいて、お母さんやきょうだい達とは一緒にテレビを観たり、おしゃべりしたり、笑ったり。しかし、お父さんが帰ってくると、途端にさっと自分の部屋に入ってしまう。「俺だけ避けられている」と思えば、お父さんも内心穏やかではありません。中にはそれがものすごい憎悪・嫌悪になって、廊下を歩く父親の足音を聞いただけで飛び出していって殴りそうになる、その気持ちを必死で抑える、と言った諸君もおります。
訳の分からぬ「吐き出し」がたまたま父親に向けられているのです。どんな良いお父さんでも、それまでどんな良い父子関係でもそんなことは一切関係無しに、ある時から突然そんな状態になります。
「父子関係の正常化」と言う人がおりますが、それはどうも違うようです。もし仮に(そんなことはありませんが)父子関係が正常化したら、激しい吐き出しの対象が失われたことになります。
一杯溜まったはち切れそうなものの吐き出しです。どこか別の出口を見つけなければなりません。その場合はもっと別の、もっと大変なものがその吐出し口になる・・・僕は仮説的にそう思っております。今出ている姿が、その子にとって一番無理のない形だと思っております。
お父さんは辛いですが、「今はこれがオレの役目だ、こんな形で息子と関れているのだ」と思うことが大事だと思います。「自分のどこかがおかしかったからではないか」ということになれば、その原因探しをしなければなりません。どこまでもどこまでも深みにはまっていきます。辛さがどんどん増すだけです。
O県から相談に見えたお父さん。顔面蒼白、ひどく具合が悪そうでした。息子さんの憎悪・嫌悪が激しくお父さんに向けられました。「超」が付く真面目なお父さんでした。「このままオレが生きていれば息子はどんどん悪くなる一方だ。オレがいなくなれば彼も立ち直ってくれるかも知れない」。奥さんと思い余った相談の末、「お前は残ってくれ、俺は死ぬから」ということになり、本当に自殺を図りました。送り出したお母さんの気持ちもどんなだったでしょうか。
人けのない山の中でナイフで胸を刺しました。刃先は肺の手前まで届き、いわゆる「人工気胸」の状態になりました。呼吸がほとんど出来なくなったのです。苦しみもがいているところを、たまたま運良く発見され、救急病院に運ばれ、結果的にはこちらの岸に戻ってきてくれました。それから1ヶ月足らずで、ご夫婦ではるばる相談にみえたのです。
「父」は辛いのです。しかし、その「避けられ、嫌悪され、憎悪され」ていること自体が大事なのです。しばらくその役目を甘んじて引き受けましょう。いずれ必ず一段落します。展望はちっとも暗くありませんから。嵐のような激しい時期が過ぎても、何となく避けられる状態は続くかも知れません。
しかし、息子さんがこの状況をすっかり通り抜けたとき、また元のような父子関係に戻ります。いや、それどころか、互いに深い傷がついた分、もっとしみじみした素敵な父と子になれます。大丈夫です。ちっとも心配いりませんから。
前の記事:「不潔恐怖(父への)」 その13 No.22
Back to top

