北澤康吉/ロジャース流カウンセラー

 恐怖や不安の吐き出しが「脱毛」と言う形で現れることもあります(髪の毛が薄くなるということはかなりの人にあります)。
「どうしても先生に会いたい」と夏樹君(仮名)自身が家族とともに来てくれました。中学3年生の男の子です。2歳のときから脱毛が始りました。たったの2 歳です。お医者さんからは「ストレスによる脱毛です」とはっきり言われました。以後いろいろな時期はあったと思いますが、脱毛は進み、学校は行った時期もあったでしょうが、相談に見えてくれた時は行かないままで中学3年生。完全にカツラを着けておりました。オールカツラです。おそらく全脱毛だったのでしょう。
 その彼がとても明るいのです。開口一番「先生に会いたかった。話をしたかった」と言ってくれました。初対面でいきなりそんな風に言われることはそうは無いのです。積る話をどんどんしてくれました。今までのこと、これからのこと。行かないままで中学は終えるけれど、その後は地元の定時制高校へ行き、卒業したら自動車整備の学校へ行きたいこと。そんなことを楽しそうに、ほとんどワクワクするような感じで話をしてくれるのです。

「脱毛という吐出しが、こんなにも彼を楽にしているのだ」、そう思われました。「脱毛」が彼の心をずっと一貫して支えてくれていたのです。守ってくれていたのです。一見とても大変に見えることが、悲惨にさえ見えることが、実はとても大事な深い意味を持っている・・・。諸君たちから教えられ続けてきたこと、それを改めてこのK君から教わりました。
心の深いところからいろいろな形で現れるその一つ一つは、どれも深い大きな意味を持っている。普通の常識ですぐそれを否定せずに、先ずそっと大事に頂いてみる。ガタガタ慌てて対症療法的なことに腐心しない(必要な治療はしながらでいいのですが)・・・、そんなことを改めてK君から教えられました。