大村洋一/NPO法人自然学校ふる里あったかとお 理事

「ねえ、オムライス(私のキャンプネーム:あだ名のようなもの)、私の名前判る?」と「あったかとお」の活動中、いきなり彼女は私の前に来て聞いた。しかし、返す言葉に詰まってしまったのである。名前がでてこない。彼女は「あったかとお」の活動には3年生の頃からこの3年間に何度も来ている。よく見ているのでもちろん顔は覚えている。しかし、名前がすぐに出てこないのである。彼女は何事もそつなくこなし、手をかけない子であるので1対1の接点はなかなかない。集団の中で特別に注意したり、個別に念を押して伝えたりする必要もほとんどないのであった。

 逆に、「甘え方」のうまい子、なにごとにもトラブルを起こす子、一度の説明で理解できなくて活動中に注意が必要な子などは、繰り返しの接点ができ、キャンプネームを次第に覚えてくるし、個人的な愛着も深まってくる。

活動中「指導者は一人ひとりの子どもをしっかり受け止め、関係をつくること」が求められる。子どもたちの個性をそれぞれ見極め、固有の対応をすることは必要であると思う。しかし、それは一方では「子どもたちへのえこひいき」になりはしないかと、いつも悩まされる。そのように彼女の目には映っていたのではないかと思うとそれが気がかりでならない。

最近の社会情勢として、新たな名簿の作成はできるだけ避けなくてはならない。しかし、のべ100人以上の子どもたちが代わる代わる参加してくる活動ではなんとか一度覚えた名前も次にはもう忘れている。毎回毎回ひやひやである。次に会った時に再び「私の名前覚えている?」と聞かされそうである。

 今のところの私の目標は一人でも多くの子どもたちの名前とキャンプネームを覚える。それに尽きる。関係つくりはやはり「名前を覚えること」からを実感している。

2009年9月16日付け
読売新聞長野版コラムより