上伊那教育財政懇談会(9月4日 伊那市 セミナーハウスにて) 
上伊那子どもサポートセンターの現状報告とお願い

 9月4日(木)に行なわれた財政懇談会のときに、意見を述べさせていただきました。
これまでのサポートセンターの歩みを知っていただけるように、皆さんにも読んでいただきたいと思います。

〔はじめに〕

 上伊那子どもサポートセンターの事務局を担当している戸枝です。よろしくお願致します。
本日サポートセンターのリーフレットと、2ヶ月に一回発行しているハミングウォーカーを配付させて頂きました。詳しい活動内容はお読み頂ければ、おわかりいただけると思いますので、ここでは上伊那地域で5年前、長野県教委が民間主導の官民協働の不登校支援策「子どもサポートプラン」を受けてスタートした、上伊那子どもサポートセンターの活動の歩みと現状についてお話し致します。


 さて、私の子どもも中学生の時に不登校を経験したのですが、子どもが不登校になった場合、学校では、学校の担任の先生をはじめ、心の相談室の先生や、スクールカウンセラーが、その子どもの支援をして下さっている訳ですが、一方地域では、家族は勿論ですが、塾や家庭教師の先生、その子が小さい頃から続けているお稽古事、例えば、お習字やピアノのなどの先生、ミニバスやバレーなどの育成会の指導者、子どもの育ちを支援する民間団体の方、そのほか地域の大勢の方が子どもたちと共に悩み、力になってくださっています。上伊那子どもサポートセンター設立準備会がスタートした時、そういった地域の方々が、何か子どもの助けになりたいという思いを持って、集まってくださいました。また、私のように、不登校の子どもを持つ親にもお声をかけていただき、活動をスタートさせました。

〔支援体制について〕

 子どもサポートプランは、子どもの権利条約に謳われている『最善の利益』とは何かを考えながら進めていこうということが共通理解されていたことです。しかし、この言葉は、漠然としていて、具体的にどうすればいいのか、戸惑うことばかりでした。そんな中で、『当事者に聴く』ということが第一歩であることに気づいていきました。そして、コーディネーターが、相談を受けて、悩んでいる子どもや、家族のニーズに応えるというやり方で、様々な支援体制が整ってゆきました。
 ニュース・レターは、「とにかく不登校に関する情報が欲しい」といわれるご家庭の切実な願いから、すぐに発行とHPの運営が始まりました。フリースペースができたのも、一人の女の子が「事務所の隅で良いから来させてくれませんか。」と、言ってきたことがスタートのきっかけです。親同士で、語り合いたいという希望や、子どもたちの学習支援の希望なども同様です。
現在ボランティアとしてサポートセンターに関わってくださっている方は、33名に上ります。
 そして年々、その人数は増えつつあります。

〔上伊那子どもサポートセンターの役割〕

 今日は、財政懇談会ということなので、資金面でのお願いをすることが本来の目的ですが、それ以上に、私がここで皆さんに是非ご理解いただきたいのは、子どもサポートセンターの活動の意味です。それは、サポートセンターの活動は、個々の子どもたちやご家族への支援であると同時に、コミュニティーの再生を目指すアプローチであり、行政・市民協働による「子どもが育つ地域づくり」であるということです。
 それは、従来のように、学校に不登校対応の加配教員を配置したり相談員を増やすといった対応では、義務教育後、ひきこもりの状態にある若者が増えている現状には、対応できないという現状を打破する意味でも大きな意味を持つ活動だと考えます。

〔官民協働による支援体制とは〕

 昨年度より行政主導のネットワーク整備事業が3年間の予定で始まりました。
長野県下10地域に地域支援センターが設置され、220万の委託費が支給されています。伊那市ではこの220万円を教育委員会とサポートセンターで仲良く半分ずつ分け合って111万円を再委託という形で支給していただいています。
 しかし、上伊那のように地域の支援者との協働による支援をしている地域は4地域だけです。そして、上伊那子どもサポートセンターのコーディネーターを、県教委の「地域支援ネットワーク事業」のコーディネーターとして、位置づけていただいている地域は伊那市のみです。他の地域は資料にもあるように1人、2人の人件費に当てられています。その地域では、一体、「ネットワーク整備事業」にどんな構想を持っておられるのかお聞きしたいと思います。

 また、子どもサポートプラン終了後にそれまでの3年間に築き上げてきた行政と民間つながりも終了してしまった地域が、いくつかあります。3年間で一地域1,000万円余を投入したプランがいとも簡単に消滅して行く現実は、あまりに虚しく、他地域サポートセンターの方々の落胆した姿を思い浮かべると、今でも悲しい気持ちでいっぱいになります。しかし、子どもサポートプランをともに築いてきた行政の方に「宮仕え」の苦悩もお聞きしたことがありますので、この現実もまた社会の問題として考えていくことなのだろうと思います。

〔官民協働による支援体制 上伊那の場合〕

 現在、上伊那地域がなぜこのような官民協働が実現できているかというと、「私たちががんばった!!」と言いたいところですが、実は違います。行政や現場の先生方の温かな支えがあってこそ実現できていることなのです。今日、こうして、この席に招いていただけることも、本当に感謝します。
 センター設立当初から今日まで、伊那市教育長の北原明先生が、あたたかく支えてくださっています。私たちの思いの及ばないところで、大変ご苦労をおかけしてきたということも感じています。
 サポートプランの終了の時、広域連合会長でもある伊那市長の小坂さんのところにセンターの存続のための陳情にうかがいました。不登校の当事者で地元の公立高校から通信制の高校に移った女の子も一緒に行きました。型通りに陳情の時間の15分が終わり、なかなか思いが伝えきれないもどかしさにため息が出るような思いでした。でも、別れ際、教育長の北原先生は、その女の子に本当に慈しみのまなざしで、温かい言葉かけをして下さり、短時間でしたが二人で会話を交わしていた光景は、深く心に残っています。

 また、今日、一緒に参加していただいた櫻井先生ですが、サポートプランの頃、伊那弥生ヶ丘高校の校長先生をしておられ、校長会の代表として推進委員になって下さっていました。そして、ご退職後、学習支援のメンバーに加わってくださり、高校に行けなくなった若者たちに高認試験に向けて、あるいは、通信制高校卒業に向けての学習支援や、進路の相談にのってくださっています。人と人が出会って繋がるという意味を言葉ではなく実践を通して桜井先生から教えていただきました。形だけの協働なんて意味がないどころか、仮面夫婦のごとく虚しいだけです。そこに人間的な心と心が出逢って初めて新しい何かが生まれてくるのだと知りました。

 また、伊那教育事務所の学校教育課 主事の歴代の先生方がサポートプラン中も終了後も、オブザーバーとしてしっかりと支えてくださっています。
昨年は、伊藤公麿先生が不登校の中学生のための進路説明会を合庁で初めて開催して下さいました。上伊那の公立、私立高校、また、私立の通信制高校や、県外の高校の進路担当の先生に直接説明を受けることができるということで、予想をはるかに上回る大勢の生徒とその親御さんが合庁の講堂につめかけました。
それまで、サポートセンターでも細々ながら、「もう一つの進路相談会」として行なってきましたが、やはり教育事務所が企画し、各学校を通して不登校の中3生に情報がきちんと届くことの重要性を実感しました。今後は、安心して進路相談会は、教育事務所にお任せできます。

 そして、忘れてはならないのは、プランの終了に伴い財政難に陥った時、上伊那の小中高の各学校の先生方が職場でカンパを募って下さったことです。現場の先生方が応援してくださっているということに、どんなに励まされたかわかりません。総額40万円程カンパいただきましたが、事務所の運営費にしてしまうのは、あまりにもったいなくて、何か子どもたちのために使いたいと思い、室内で行うマレットゴルフの道具を購入し、後は貯金してあります。この先、センターの存続の危機が再び訪れた時には大事に使わせていただきます。

 行政の方や学校の先生方のお力添えと同時に地域の多くの方々のご協力もたくさん頂いています。プラン終了後、フリースペースが「伊那市生涯学習センター」から出なければならなくなった時、市内の教会の皆さんが、もう教会では使われなくなった一戸建ての家を無償で提供してくださり、現在に至っています。無償どころか、冬の間はストーブも貸してくださり、灯油も提供していただいています。

 こうしてあらためてこの5年間を振り返ってみますと、サポートセンターは、地域の多くの方々によって育ててもらってきたことがはっきりわかります。私は、官民協働という形で、ゆっくりとしかし確実に、地域に温かな人の輪が広がっていく様をずっと見させていただいてきました。
 娘が不登校になって悲しくて涙した日々が、今日、こうして感謝でいっぱいに代わるとは、想像もしていませんでした。人として、親としてエンパワーされるとともに、地域への信頼感も高まりました。本当にありがとうございました。
 まだまだ地域には、孤立感と将来への不安でいっぱいになっている子どもたちやご家族がいらっしゃいます。そういうご家族が人の輪の中で元気を取り戻していくお手伝いを上伊那子どもサポートセンターも微力ではありますが続けていきたいと願っています。

 さて、地域づくりは人づくりと言います。子どもが育てるのに何年もかかるように、地域を作るのにも、何年もかかるものだと思います。官民協働による支援というのは全てが順調に進むわけではないかもしれませんが、子どもの幸せを願う気持ちで繋がれば、良い方向に進んでゆくと思います。まだ、5歳になったばかりの「子どものサポートセンター」を、みんなで大事に育てていただきたいと願います。

 来年でネットワーク整備事業は終了します。再びサポートセンターの存続が危ぶまれ、不安な日々がやってきます。
 現在、支援している子どもたちや若者たちを継続して支援していかれるように、また、地域の輪をますます広げて行くことができるように、是非、上伊那子どもサポートセンターにほどほどの予算付けを継続的にお願いいたします。ほどほどというのは、最低限、ボランティアスタッフの持ち出しがない状態にしていただきたいということです。

〔おわりに〕

 最後に、子どもサポートセンターでは、たびたび講演会の企画もしています。(ハミング・ウォーカーのインフォメーションをご覧下さい。)しかし、なかなか学校の先生方にご参加いただけない現状があります。現場の先生方が超多忙なことは、わかっていますので無理は言えないのですが、私たちの企画する講演会には、不登校の子を持つ多く母親、父親が参加します。その時に、担任の先生が、動員ではなく、自発的に足を運んで下さることが、どれほど親を勇気づけ、励ますことになるかを知って下さい。100回の家庭訪問より「先生は、私と一緒に悩み考えてくれているんだ。」という思いを家族は持つことができます。
 勿論、仕事から離れて、一地域住民として、一子を持つ親として、ご参加いただければこれもまたうれしいことです。よろしくお願いします。
 南信は、県内でも不登校の子どもが多い地域です。力を合わせて、あたたかな地域にしていくことを心から願っています。

長時間お話をお聞きくださり、ありがとうございました。